シリコンバレーで導入されている
「リモートリサーチ」とは?

「リモートリサーチ」とは、数あるユーザビリティテストの手法の一つで、ソフトウェアや電話を通してユーザービリティテストを行うことを言います。特にすでに公開されているウェブサイトやアプリケーションのユーザビリティテストに利用されます。

現在、「リモートリサーチ」が、Facebook や Instagram などのシリコンバレー企業を中心に Oracle や Coca Cola 、AAA(アメリカのJAF)等の米国の大手企業が採用しています。

なぜ、「リモートリサーチ」が採用されているのでしょうか?
「リモートリサーチ」とはどのようなものなのでしょうか?

そもそも「ユーザービリティテスト」とは?

ユーザビリティテストについて、「リモートリサーチ」の前に簡単に説明しましょう。 一般的なユーザービリティテストは、ユーザーにラボなどの施設へ来てもらい、製品やサービスのユーザビリティをチェックするために、タスクを与え、ユーザーの利用状況を観察、分析し、問題を把握するために利用します。

例えば、ユーザビリティテストを行うサイトがECサイトの場合、そのショッピングサイトで「好きな、必要な商品の選択」>「決済」までをタスクとしてあたえます。

ユーザーには考えていることを発話(Think Loud)してもらい、タスクの途中で迷ったり、停止した箇所を録画したり観察します。テストの後で問題のあった箇所を分析し改善します。ユーザーに実際に利用してもらうことでリアルに近い利用シーンを観察できます。

ユーザビリティテストは開発の初期段階をふくめて、フローのあらゆる場面で実践できる非常に有用な方法です。UX界隈では非常に有名なヤコブ・ニールセンが「本当のユーザーを迎えてテストすることは、ユーザビリティテストとしてもっとも本質的だ。その代わりはないほどだ。」と言っているように有用な方法です。

5人の被験者でユーザビリティテストすれば85%の問題を解決することができると言われ、それ以上、被験者の数を増やしユーザビリティテストを行っても同じような結果になり、あまり意味がないとされています。(5人セットを繰り返して行うことを推奨する方もいます。)

5人調査することで85%の問題が解決できることを表した曲線
出典:Why You Only Need to Test with 5 Users http://www.nngroup.com/articles/why-you-only-need-to-test-with-5-users/

リモートリサーチは「モデレート(司会)」と「自動」 がある

さて、ここから本題の「リモートリサーチ」についてご紹介していきます。 「リモートリサーチ」には、電話やインターネット、ソフトで行うなどいくつかの種類があります。主に「moderated(司会者あり) 」 と「automated(自動)」の2種類の方法に分類されるとユーザーリサーチの専門家のNate Bolt氏は説明します。

「moderated」は、電話やスクリーンを共有しながら、司会者の案内によってテストを行います。一方「automated」は、ユーザーが自身のパソコンやスマートフォンなどのデバイスで与えられたタスクを行います。

よく知られている「A/Bテスト」や「マルチレベルテスト」なども「リモートリサーチ」の一つです。

「リモートリサーチ」はポピュラーではない?!

実のところ、5年前までは「リモートリサーチ」の手法のわずか5%のみでした。しかし、この5年で「リモートリサーチ」のツールが数多くリリースされ、シリコンバレーの企業では利用される割合が急激に増え、日本でも大手企業の一部でも「リモートリサーチ」が取り入れされるようになってきています。

「リモートリサーチ」のアプリの1つである「Ethnio」を利用すると、はじめの画面に上記のようなポップアップが出現し、実際のユーザーにユーザビリティテストのリサーチへの参加を促します。

「あなたはリサーチに有料で参加する時間が少しありますか?」と見出しが表示され、報酬としてアマゾンの75ドルのクーポン券をオファーしています。

日本でも街頭調査などがありますが、実際のユーザーに直接リサーチのオファーができ、ユーザーも謝礼と共に、使うアプリやウェブサイトのデザインが使いやすくなるので参加される可能性が高くなります。

これらの情報は企業にとってメリットも大きく、UXが改善されることで費用対効果が即座にあらわれます。特に、社内と同じ答えになりにくUXデザインについての議論では、ユーザーのリサーチ情報は有効的に活用できます。

成功に繋がる有効的な「リモートリサーチ」のメリット6つ

「リモートリサーチ」を利用する場合の6つのメリットをご紹介します。

  1. 地理的にさまざまな地域の人を被験者にしたい場合
  2. 被験者がラボなどの施設に来られない場合
  3. さまざまな行動パターンの被験者をテストしたい場合
  4. 予算が限られている場合
  5. 時間が限られている場合
  6. ユーザーの自然な動作を観察したい場合

1)地理的にさまざまな地域のユーザーを被験者にしたい場合

日本国内の製品やサービスを購入したい外国の方はたくさんいます。 インターネットを通すことで、海外への販売も実現可能になりました。それらの製品やサービスを、英語版などを用意して海外に展開する場合においてリモーリリサーチは有効的です。

日本では良いUIデザインや表現や文言だとしても、海外との文化的な違いによって使えない表現や文言、UIを変更する必要があるかもしれません。

もし、ターゲットの国が地球の反対側であれば、ユーザービリティテストを行うために多額の予算と時間を必要とすることになります。リモートリサーチは、インターネット環境さえあれば遠く離れていてもテストを行うことができます。

2)被験者がラボなどの施設に来られない場合

先の地理的な理由や、身体的な理由などによって遠距離を移動することができない方をターゲットにする場合、移動できない環境でも被験者がいるかもしれません。もしかしたら、単純に時間がないだけの時もリモーリリサーチは有効的です。

3)さまざまな行動パターンの被験者をテストしたい場合

ラボのように設備が机とデスクトップの環境では、被験者は緊張して下手な行動をしないようにと、似たような行動をしてしまいがちです。しかし自分のパソコンやスマートデバイスでは違う行動をしています。

特にスマートデバイスにおいてはユーザーの行動はコンテキストによって変化します。その点、リモートリサーチはユーザー自身の環境においてユーザー自身のデバイスでテストを受けられることは大きなメリットです。

4)予算が限られている場合

ユーザビリティテストではユーザーに参加してもらいテストしますが、依頼者はその報酬や交通費を負担する必要があります。それらの単価が高ければユーザビリティテストの予算は大きく膨れ上がります。リモートリサーチでは、旅費を負担することはありませんので、報酬のみを支払すれば良いことになります。そのため、ラボで行う場合より予算を低く抑えることができるでしょう。

5)時間が限られている場合

どのプロジェクトも改善は、なるべく迅速に行いたいものです。ユーザビリティテストで適切な被験者の選択から、アポ取り、テストと非常に時間がかかるプロセスです。リモートであればユーザーの選択からユーザー参加までを自動で簡単に行うことができます。

6)ユーザーの自然な行動を観察したい場合

ユーザビリティテストでは、実際の被験者を通して様々な問題を発見することができます。非常に有用なUXの検証方法ではあります。しかしながら、被験者の環境によっては、結果自体が左右されやすいのも事実です。特にスマートフォンのようにユーザー環境が多様化しています。そのため被験者の環境に変えること無くユーザビリティテストを行う必要があります。皆さんもリモートリサーチを行ってみてはいかがでしょうか?少し違った結果が得られるかもしれません。

まとめ

ユーザビリティテストでは、実際の被験者を通して様々な問題を発見することができます。非常に有用なUXの検証方法ではあります。しかしながら、被験者の環境によっては、結果自体が左右されやすいのも事実です。特にスマートフォンのようにユーザー環境が多様化しています。そのため被験者の環境に変えること無くユーザビリティテストを行う必要があります。皆さんもリモートリサーチを行ってみてはいかがでしょうか?少し違った結果が得られるかもしれません。

リモートリサーチツール紹介

Ethnio

http://ethn.io/

UX DAYS TOKYOにも登壇するNate Bolt氏が開発しているツール。シリコンバレーを中心として多くの企業が利用しています。レスポンシブWebデザインに対応しているので、スマートフォンでも利用することができます。また他のツールとも連携できるの非常に便利です。

Go To meeting

http://www.gotomeeting.com/fec/

ユーザーの行動を録画できるツールです。どちらかというとオンラインミーティングのツールです。画面をシェアして被験者にタスクをお願いして、その利用状況を観察したり録画します。

Dscout

https://dscout.com/

リモートリサーチでは、まだ少ないスマートフォンで利用できるツールです。